KTC GROUP50th

”いつまでも読み継がれる本”をつくる出版レーベル
「アノニマ・スタジオ」主催のBOOK MARKETが開催

2024.08.31

アノニマ・スタジオ主催 BOOK MARKET 2024(東京都台東区)

KTCグループの出版レーベル「アノニマ・スタジオ」主催の「BOOK MARKET 2024」が2024年7月に浅草・台東館で開催されました。出版社を中心に今年は過去最大規模の全61ブース・74社が集結しました。アノニマ・スタジオはどのような想いで本づくりやBOOK MARKET等のイベントを行っているのでしょうか。アノニマ・スタジオに関わる人々に取材しました。

アノニマ・スタジオ主催「BOOK MARKET」とは?

「読者の方に直接本を届けたい、直接声を聞きたい」という想いから誕生したこのイベントは、2009年にアノニマ・スタジオ(東京都台東区蔵前)の1階イベントスペースでスタートしました。第1回はたった7社だったBOOK MARKETは回を重ねるごとに規模が拡大していき、今年は過去最大61ブース74社が出展しました。出展社は名前の知られた出版社のほかに、取次を介さず直接書店とやり取りする出版社、さらには“ひとり出版社”なども多く参加。印刷会社や古書店、八百屋などもブースを構え、多種多彩な本が集まりました。

今年も多くの来場者が訪れた「BOOK MARKET 2024」

BOOK MARKET運営担当・安西純さん(アノニマ・スタジオ)へお話を聞きました。
―BOOK MARKETはどのようなイベントですか?
 各地から面白い本が大集合する「本好きのための本の夏祭り」です。出版社ごとにブースを構えて本を並べるので、大型書店ではなかなか販売されていない個性的な本に出会えるのが魅力の1つです。コアな本を求めて来場してくれてる方や毎年欠かさず来てくださっている方もいますね。ときには一人で20冊購入する本好きの方もいらっしゃいます。
 このイベントの特徴は「出版社とお客様が直接会話できる」ことです。本を作っている立場の人が読者と直に接する機会はあまりありません。出展社のみなさまから、お客様と近い距離で話ができることを評価してもらっていまして、有難いことに「出展したい」と言ってくれる出版社が毎年増えていっています。

―アノニマ・スタジオがBOOK MARKETを主催し始めた経緯や、当時の想いを教えてください。
 以前は他社が運営するブックフェアに出展していました。ただそのブックフェアは一般のお客様と話ができる機会はあまりありませんでした。本を手に取ってくれる方と”直接”つながりたいと考え、自分たちで主催することを決めました。小規模の出版社を中心に声をかけ、2009年にアノニマ・スタジオの1階イベントスペースで開催したのがスタートです。

お客様との対話を通して直接繋がることができる

BOOK MARKET 出展社「パイ インターナショナル」代表・三芳寛要さんからのコメント

 BOOK MARKETには約10年出展しています。出版社が読者と直接コミュニケーションをとることで「どのような方がどのような本を手に取り、表紙・タイトル・中身についてどのような意見を持っているのか」を現場で学ぶことができる機会となっています。研修も兼ねて、当社では入社1〜2年目の若手スタッフが参加しています。読者の生の声が聴ける非常に貴重な場です。
 読者にとっても、初めて見る本に出会える場になっていると思います。当社はデザイン書・ビジュアル書を中心に、おしゃれで、気持ちよく、そして新鮮な出版を目指す総合出版社です。個性的なビジュアルの本を多くつくっています。同じ出版社の書籍が一堂に陳列することは珍しいため、このイベントを通して「個性的な本を出版していること」を知ってもらえる良い機会にもなっていると感じています。

出版レーベル「アノニマ・スタジオ」の想いとは

アノニマ・スタジオ 下屋敷 佳子さん

アノニマ・スタジオの想いや出版業界における役割などについて、創業当時から事業に携わっている下屋敷佳子さんに聞きました。
―どのような出版レーベルですか? 
 アノニマ・スタジオは「ごはんとくらし」をテーマとしたレーベルです。食べること、住まうこと、子育て、旅、こころとからだ等、暮らしを少し豊かにしてくれる生活書を中心に、本づくりやイベントを行っています。
 「本当に届けたい人に届ける」。この想いからアノニマ・スタジオはスタートしました。大量生産・大量消費の本ではなく、企画からデザイン、販促、流通まで信念とこだわりを持った「いつまでも読み継がれる本」をつくっていきたい。小さなプラスの発信を通して読者が自ら気づき、ゆっくりと想いや行動に変化が訪れ、日々の生活が少しでも豊かになってほしい。これらの想いを大切にしています。わたしたちの想いはすべての本にメッセージとして載せています(下図参照)。

―雑貨店など独自の販路を確立していますが、「本当に届けたい人に届ける」ための工夫を教えてください。
 創業当時から「本と出会う場所は必ずしも本屋でなくてもよい」という想いがありました。生活に関する本を多く出版していたこともあり、”本当にその本を求めている読者”に会うためにはどうしたら良いのかと考えた際、雑貨店やカフェへ直接販売(直販)を始めたことは自然な流れでした。東京都内のカフェや雑貨店に「こんな本を置いてみませんか」と地道に提案して回ることからスタートしました。例えば、ベビー用品を扱っている雑貨店には絵本や子育ての本、カフェにはボサノヴァの音楽本やデザインの凝った装丁の本を提案しました。今から約20年前の話です。店舗経営者の方は「出版社から直接本の仕入れができる」ことに最初は驚いていましたね。地道な営業活動を続けて、直販の輪を広げていきました。

生活雑貨店で販売されているアノニマ・スタジオの書籍。独自の販路を拡大している

 この20年間でわたしたちの活動に共感してくれる企業も増えています。近年では直販に重きを置く出版社や、書店ではない店に本を卸す専門卸企業、そして買い切りで仕入れをする書店も多くなりました。そのような書店は店主が「本当に置きたいと思う本」をセレクトして買い切りしているので、書店によって並んでいる本が全く異なって面白いですよ。それぞれがこだわって本をつくり、信念を持って販売しているからこそ、「いつまでも読み継がれる本」が読者の手元に届くと思っています。今後もこのような出版社や書店とともに出版業界を盛り上げていきたいです。

―今後のアノニマ・スタジオの展望を教えてください。

BOOK MARKET 2024でエシカルブックとして販売されたB本

 本というものを、また少し違う側面から考えていきたいと思っています。取次で書店に並んだ本は一定期間売れないと返品されるのですが、本のカバーや帯を掛けかえて再度流通させます。ただ本体が傷んでしまった本は一般書店では販売ができず、断裁するしかありません。もし「少し傷がついていても問題ない」と言ってくれる方がいるのであれば、そういった方々に本を届けていきたいと考えています。その仕組みやルートを考えていきたいですね。まずは今回のBOOK MARKETや社内販売などでエシカルブック(いわれるバーゲンブック)として販売をスタートしました。一度は販売不可となった本の”新しい寿命”をつくっていきたいと思っています。

「いつまでも読み継がれる本」を本当に求めている方に届けるアノニマ・スタジオ

アノニマ・スタジオの本を置く「暮らしの雑貨店 CONNETTA」西 良博さんのコメント

 当店は「オーガニック・エコロジー・スローライフ」をコンセプトに、暮らしの道具や日用品、衣料品、食品、本、自転車などを扱っています。人や環境にやさしいモノ、素材の良さを活かしたモノ、丁寧な手仕事で作られたモノなど、毎日の暮らしを心地よく、楽しくしてくれるモノをいろいろと集めています。

 雑貨と本は非常に相性が良いと思っています。店頭で見つけたお気に入りの雑貨や暮らしの道具が本に載っていたら、つい見たくなりますよね。アノニマ・スタジオとは開業当時から約10年のお付き合いになります。本の装丁がとてもお洒落で、普段本を読まない方も手に取りやすい本が多いですね。アノニマ・スタジオの本は陳列すると非常に映えて、空間そのものが少し楽しく華やかになるので、ありがたく思っています。

アノニマ・スタジオの本をはじめ、こだわりの本を置く雑貨店主の西 良博さん

アノニマ・スタジオの信念や想いが本とともに、賛同してくださる出版社や書店・雑貨店の方々、そして読者の皆様へつながっていました。「読み継がれる本」を通して、本を手に取ってくれる方へバトンが渡されていました。今後もアノニマ・スタジオが生み出す本やイベントにご注目ください。

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